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『自由とは未来への選択』

もうひとりのウェストポインター

しかし、明治末期に彼の理想は達成されなかった。日本は、富国強兵の道を戦争へとまっしぐら進んだ。不思議にもガルストの理想は、敗戦後もうひとりのウェストポインター、ジェネラル・マッカーサーの農地改革によって達成された。マッカーサーがウェストポイントに入ったのはガルストの死んだ年であった。マッカーサーは日本に大きな変化をもたらした。新しい憲法が制定された。日本の国家目標は「富国強兵」から「富国平和」「富国福祉」へと変わった。

日本の内面の問題

日本は、国民としてトラウマをもっている国である。富国強兵策そして侵略戦争の悲惨な結果が、深いトラウマとなって日本人の心に残った。しかも今なおその傷は癒されていないのである。マッカーサーの改革は、所詮外面的変化でしかなかった。しかし彼は、日本の内面の問題を見抜いてはいた。彼は言った有名な言葉がある。「イギリスやアメリカが45歳ならば日本は12歳だ」。これは精神の年齢を言った言葉である。未熟な12歳の少年に自由を与える、それは少年犯罪となるのは当然ではないか。大学生ではスーパーフリーのたぐいの自由になる。戦後与えられた自由は腐り出している。日本の癒されない傷は腐り出している。最近長崎の12歳の少年犯罪に日本中が驚かされた。長崎ではそれを第二の原爆と言っている。あの12歳の犯罪において今日の日本社会は自由の腐敗の腐臭を嗅いでいるのである。
財界人は最近よく、先に紹介した「未来は現在の延長ではない」という言葉を発する。現在の延長は現在にもどるだけだ。山手線のような環状線では過去・現在・未来が結び付いているからである。もう一度考えて見なければならない。ひとが富士山へ行く目的をもつならば、山手線から中央線に乗り換えなければならない。未来への直線コースへ乗り換えなければならない。もし歯が痛いなら、日常生活の繰り返しから歯医者に急いで行くという直線コースに向かわなければならない。日本は、個人としても国家としても、この病める現在から癒しの未来への直線コースに乗り換えなければならないのである。戦後与えられた自由はこの日本の未来を選択するためではないか。新宿駅には乗換えを促すアナウンスが響いている。山手線で眠っている人は目をさまし、乗り換えるために立ち上がらねばならないのではないか。

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講演する大木英夫理事長
講演する大木英夫理事長