名誉博士号御贈呈に感謝して
前日本銀行総裁・聖学院名誉理事長 速水 優
この度の聖学院名誉理事長就任にともない、この盛大な「オール聖学院100周年記念・聖学院大学創立15周年記念式典」の席上、聖学院大学・大学院より、名誉博士号の贈呈をうけましたこと、身に余る光栄と感謝いたしております。
私は大正14年(1925年)神戸で生れましたが、父が銀行員で転勤が多く、私が生れる前に東京勤務で家が中里にありました。その頃、私の長兄と姉とが当時滝野川聖学院の中にあった中里幼稚園に通っておりました。その時、兄の受持であった中川咲子先生という立派な保母の先生が母と兄とを教会に連れていって下さったのがわが家にキリストの香りがみなぎり始めるきっかけとなったようです。
兄が中里幼稚園から大塚の高等師範附属小学校へゆき、やがて父が神戸に転勤となって、神戸で私は生れたのですが、この兄と母とが私を小さい時から信仰にみちびいてくれました。先程の保母の中川さんには母も兄もなくなるまであたたかいご指導をうけていました。
この兄は戦争で召集をうけ、主計将校として中支で病気となり、白衣で帰国して、我々の見る前で立派な信仰の生涯を終えたのです。私と年はひとまわりもちがっていたのですが、すべての点でよき兄であったと思います。
私自身も一橋大学に在学中に召集をうけましたが、終戦で復員して直ちに兄の遺志をつぎ阿佐ヶ谷教会で故大村勇牧師より洗礼をうけました。
その後58年、家族とともに教会生活を続けており、一方で、大学を出てから五六年、微力ながら日銀・企業・財界・また日銀と時代とともに重い責任を背負い、これまで主の導きにより、よい職場を与えられてきました。どうやら力いっぱい任務を果してきたと思います。この3月に日銀総裁を任期退任しましたが、ここまで恵まれた生涯をすごせたと感謝しております。
大木理事長とは、私が民間企業・財界の重責を負っております頃からご指導をいただき、特に日銀総裁の5年間には、激励、助言をいただき、おりにふれ一緒に祈っていただきました。
また、この大学院には、私が日銀総裁に任命をうける前の2年間、客員教授として15回程度、国際金融を中心に公開講義をさせていただきました。
この度、このような名誉ある地位を与えていただき、聖学院のこれからの発展にすこしでもお役に立てればよいと思っております。
微力ではありますが、皆さまのご協力を得て、責任を果してまいりたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。
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